Making of 虹の林檎 その2

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ブルーバックを前に、Mac君を撮影しているところ
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ねんどにディテールをつけるために、陶芸用のヘラで、整形しているところ
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三男坊の頭。ベースを作り、へらで整形する
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頑丈ではないので、その都度人形の顔を整形する。

 

■実際のモデリングとトラブル

 これらの素材を使って、実際に制作した場合のトラブルは以下のようなものである。

・鉛の芯に対する粘土の食いつきが悪い
・人形を動かすと、芯が粘土を突き破ってしまう
・手足を動かそうとすると、押さえた部分が変形してしまう

 はっきり言ってしまえば、全くアニメーションをすることができないのである。これでは話にならない。
 そこで知恵を絞り、やや方針を変更して以下の対策を講じた。
 まず粘土の食いつきの悪さに関しては、鉛の芯に不織布を巻き付けることで回避した。また、粘土が芯に負けてしまう対策としては胴体部分に、布で作成した服を着せることで回避した。手足など頻繁につかむ部分に関しても、フェルトなどで作成することで変形を回避した。結局粘土がむき出しになったのは、頭の部分だけとなってしまったが、アニメーションをする過程でたどり着いた結果であり、やはりオールクレイで作成するのは本職でない限りは難しいと言うことである。
 こうした結果を最初からわかっているならば、クレイアニメーション用の粘土にこだわることなく、オーブンなどで焼き込むことにより硬化する粘土を使用し、胴体部分は布で作成するというチョイスもある。
 その他のポイントとしては、アニメーションをする過程で、人形を地面に固定するために、足部分の芯は細い針金とした。足の裏から針金を突き出すことで、発泡スチロールの地面に刺し固定する事とした。

■撮影のノウハウ

 撮影時のトラブルは、事前の研究により想定される問題点をクリアしていたので特に何も無かった。
 SONYのHi8ハンディカムのCCD-TR2000を、重量感のある三脚と、その上に固定した接写撮影用のクローズアップスライダーに載せ、フォーカスをマニュアルに、明るさを手動に、自動ホワイトバランスを切って、ワイドコンバージョンレンズを装着して撮影を行った。
 クロマキー合成に欠かせないブルーバックには、東急ハンズで購入した傘の補修用のナイロンの青い布を、1.6m幅×2m用意し、500WデイライトでHONEY SOFTというソフト光タイプの電球を3灯使用。これに枠をはめ、照射面をトレーシングペーパーで遮ることによって、ソフトな光線を作り出した。
 これらをそれぞれ別方向から照射したのであるが、それでも完全に無影とすることはできず、もう2〜3灯は必要であると感じた。
 ただ、当事務所は電源容量が60Aであり、一般の家庭と比較して20〜40A容量が大きいのであるが、それでもブレーカーが落ちることが、多々あった。照明使用できるかどうかをチェックする場合は、必ず他のマシンを止め、1灯づつ点灯することで確認する必要がある。さもないと筆者の事務所のように、サーバークラッシュを引き起こす羽目になる。

 取り込みには先ほど述べたとおり、Adobe Premiereを使用した。「ストップモーション取り込み」のオプションとして「連続画像」の取り込みを指定すると、スペースを押すたびにシャッターがきれたようになる。撮影が終了すれば、即座にアニメーションしてみることも可能なので、この部分での苦労というものも全く無かった。
 最も苦労したのは、クロマキーに代表される映像の合成である。絵対絵のクロマキー合成は、完全にソフト上で行うことでありさほど難しくはない。絵を1枚1枚Adobe Photoshopに取り込み、そのグレイスケールをアルファチャンネルにコピーすることで、階調付きのまま、透けつつアニメーションする映像を実現した。しかし実写対絵の合成は、ブルーバックを使用するしかない。しかしこのブルーバックに相当する素材は、さまざまなものを使用してみたが、いっこうに綺麗には抜けないのである。
 結局はAdobe Premiereの透明度設定でクロマを指定し、ブルーバックを抜く色として、類似性13〜17、ブレンド6〜7で合成を行った。しかしホリゾント状に渡したブルーバックに対して、カメラを引けば引くほど階調が取り込まれてしまい、人形周辺をメインにすると、画面上部が綺麗に抜けないという症状にあった。一部見苦しい点があったことをお詫びしたい。これに関しては、きちんとライト設置用のフレームを組んで、多方向ライトを照射することで対処可能であるが、さすがに元は一般家庭なので、飛ぶヒューズとの闘いが続きそうである。

■ストップモーションをフィードバック

 さて、ここで得たノウハウを3DCGアニメーションにフィードバックするとどうなるだろう。
 通常最近の3DCGで人形を動かす場合、モデルはインバースキネマティクスで、アニメーションはキーフレームアニメーションで、というのが主流である。少し説明を加えると、インバースキネマティクスとは、人体を形作る物体を互いに位置関係の関連を持たせながら一つの物体として扱う手法「構造体」の一種である。その中でも特に、動きを指定するときに構造の先端(手や足)を動かすだけで、腕→胴と動きが伝わるものを指す。現在人体を扱えるほとんどのCGソフトがこれに対応している。
 キーフレームアニメーションとは、60コマのアニメーションを作成する場合、たとえば1コマ目と30コマ目と60コマ目ので、物体の状態を変形させておくと、その過程のコマでは、ソフトが自動的に動きを補完してくれる手法である

 


 これらの手法に裏付けされたアニメーションは、よほどのこつをつかまなければ、いわゆる「CGクサイ」動きになってしまうという弱点を持つ。メカものなどではまだ良いのであるが、人体では非常に臭いのである。これを回避しようとすれば、構造体の関節部分の制限を限界が近づくにしたがってトルクがかかるものを採用したり、重力を計算に入れたりという手法用いるしかない。
 いくらハイテクを利用しても臭くしかならないのであれば、いっそ発想を逆転して、こういうのはどうだろう。キーフレームアニメーションに対応したCGでありながら、敢えて、コマ毎に物体の動きを指定するのである。
■Ray Dream Studioを使ったサンプル

 サンプルとしてRay Dream Studioのチュートリアルに入っている、Mannequin.rd4を使用する。いわゆるデッサン人形をモデル化したものであり、構造体としての設定もすべておわっている。
 手近に無い場合は、構造体を組むことができるCGソフトなら、何でもよい。そのモデルを読み込んでまず、秒あたりの再生枚数を指定する。Ray Dream Studio では秒間8コマという設定が無いので、秒間15コマを使用する。そして1コマ単位でシーンを送り、物体の動きを指定して行くのである。動きは非常にオーソドックスなところで、「歩く」を作ってみよう。1秒間でループするアニメーションを作るとして、デフォルトで2秒となっているタイムライン上のアニメーション長を1秒に縮める。

 そして、ループアニメーションを作成するために、まず最初のシーンから、歩くというプロセス中の1動作として、人形を形作っておく。15コマなので、最初は直立不動に近い状態で、次のコマから片足を前にもう片方を後ろに向かって動かす。各足が前後の頂点になるのが、約4コマ目と11コマ目と考えれば良い。手はその反対の動きをすればいいだろう。動きを設定したら画面上のタイムカウンターを前に進めて、次のコマの動きを設定する。その繰り返しである。作成しおわったら、ループ再生の指定をして再生する。これで完成である。

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Ray Dream Studio を使った補完の例

 

■実現した感想

 実際にサンプルを作って感じたことは、手動アニメーションの味とは、無駄と誤りであるということである。
 無駄とは、一連の動作をするのに必要以上にオーバーアクションになったり、動かす必要が無いのに細かいところまで動かしてしまったりということである。
 誤りとは、一連の動作中に、誤ってアニメーションの流れとは間違った動きを1コマだけしてしまっている場合である。そしてぎくしゃくした動作。これらがあいまって、ストップモーションアニメーションを形作っているのである。
 その効果はCGであっても演出可能である。ストップモーションアニメーションにトライしてみたいが、どんな感じになるかわから無いという人は、一度手持ちのCGソフトでトライしてみるのも良いかも知れない。今までのCGとはまた違ったニュアンスがそこに生まれてくるだろう。

 さて「言葉がしゃべれなくなる林檎なんだよ」という占い婆の言葉で終わった第1回であるが、このままではアップルからクレームがきそうである。しかしご心配なく。6回シリーズの中でその意味が何であるかをお伝えする。ちなみにこのストーリーはCGではない。
 私たちは「絵本と童話」を作っているつもりである。今後の展開にご期待いただきたい。毎回異なった手法で皆さんの目を楽しませたいと考えている。

(MacUser/Japan 1996.11)


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